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執筆者の写真川上 信也

キリンさん

 九十九島を撮影したついでに、麓にある動植物園に行くことにした。別に動物とふれあいたいわけではなかったけれど、九十九島の思い描いていた撮影が不発に終わったので、動物さんでも眺めながら気分転換したかったのだ。

 入口で「もうすぐキリンさんトークがありますのでよかったら」と言われた。ここではキリンさんとお話ができるのか。

 入ってすぐのところにキリンが二頭いた。キリンさんトークというのは飼育委員がここのキリンさんについてのお話をするということらしい。まあそりゃそうだ。二十人ほどが集まっていて楽しそうにキリンの前でお話を聞いていた。みんな親子連れだ。一人の僕はちょっと居心地が悪くてはずれに移動したんだけれど、なぜか一頭のキリンが僕のほうに向かってくる。さっきからずっと視線を感じていたキリンで、真上にやってきてしきりに僕を舐めるようとする。もちろん絶妙な高さの壁があってぎりぎりのところで届かないようになっているけれど、真上から迫ってくるキリンの首、頭というのはとても非日常のとても不思議な感覚だ。しかし僕の何がそうさせたのかな。ちょっとだけお話できたような気分にはなったけれど。



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