奈良での仕事を終え、京都へと向かった。
ここからはプライベート。
ホテルは京都市役所そばのホテルドルフを予約しておいた。安くてきれいで朝食付きでスタッフの対応もとても心地いので。
窓からはお隣の古い民家の屋根が眼前に見える。小雨が降っていたので瓦屋根がややしめって黒々と光っている。確か福田平八郎の絵にこんな光景があったなあと思い浮かべた。あの絵は雨の降り始めだったかな。雨粒の模様が見えればもっとよかったんだけど、すでにかなり降り続いたあとだった。
京都にやってきた大きな目的は、「京都文化博物館」で開催されている「パリ マグナム写真展」を見ること。開館の10分前に到着してしまってしばらく門前で待っていた。どんだけ熱心なファンなんだと思われそうだ。
そして会場へ入り、何度も足をとめ、戻り、進み、ゆっくりゆっくり眺める。こんな力強い写真って久しぶりにみた気がする。もちろん世界最高峰の方々だから当然なんだけど、それにしてもこの一枚一枚の迫力はどういうことなんだろう。時代が違うということもるだろうけれど、シャッターを押すことに込める心の度合いがなにやら違っているようにさえ感じてくる。命がけの写真も多数あるし。比べるのもなんだけど果たして僕はどうなのか、いろいろと考えさせられながらも感動しながら結構長い時間会場を行き来していたのだった。
そして久しぶりにマット付きの額写真を見た気がする。このごろはマットのない巨大なプリントを延々と並べている写真展が多くなって、かなり飽き飽きしていたので。 このマットの余白からスーッと気持ちが入ってゆく、あの感覚がとても好きだ。
会場を出て、鴨川を超え、動物園を過ぎ、南禅寺方面へ。
すぐそばの金地院という庭園に入った。徳川家由来の庭園だそうだ。
周囲にはそれなりに観光客が多かったけれど、ここには誰もいなかった。奥のほうで庭師の方が黙々と作業を進めている。庭を眺めながら先ほど購入したマグナム展の図録のページをめくってゆく。いい時間だ。