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執筆者の写真川上 信也

真昼、真夏の渓谷

 街中の猛暑からほんの少し開放されて、渓谷には爽やかな夏風が吹き抜けている。すでに第一駐車場は満車になっていて、水音に交じってにぎやかな声が響いていた。

 岳切渓谷は一枚岩を流れる珍しい渓谷。水の中を歩いて上流まで容易に行くことができる。周囲は家族連れやカップルばかりで、一人で三脚持って撮影に来ているのはいくら見渡しても僕だけのようだ。そんな状況は居心地が悪い場合もあるけれど、僕はこの感じが結構好きだ。自分だけ違う世界にいるようで、人が見ていない、もしくは気付かない自然界の小さなささやきのようなものをこっそり教えてくれているように思うから。そして子供たちの声やミンミンゼミの響きは、いかにも真夏、真昼の渓谷という感じで昔の夏休みを思い出す。これは周囲がカメラマンだらけの早朝の渓谷では決して味わえない。

 心をキュンとさせる懐かしさ、この感覚に囲まれながら写真を撮りたいと思った。




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                            大分県宇佐市 岳切渓谷      

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