久留米市美術館で先日まで開催されていた「坂本繁二郎展」に行っていた。
坂本繁二郎の絵は今までにも何度か見たことがあるけれど、今回は40年ぶりに見られる絵もあり、ぜひとも行ってみたかったのだ。もちろんそれほど詳しくはないけれど、何かを感じられればと思ったのだ。
最終日の午後に到着すると、美術館の裏に移築されている坂本繁二郎のアトリエが公開されていた。いつ行っても中には入ることができなかったのだが、今回はさすがに「坂本繁二郎展」というだけあって、美術館ボランティアスタッフの方の説明付きで公開されていた。ちょうど説明の時間だったので、ギリギリで中へ。
初めて内部に入って思ったのだが、外から見る以上に窓が大きい。壁がないくらいに一面の窓となっている。
ボランティアスタッフの方に窓の事をお聞きすると、画家のアトリエには北側に窓を設けることが多いのだという。やわらかい自然光が入ってくるからだ。ただ、坂本繁二郎の場合は、このアトリエが元々あった八女では、茶畑の緑が室内に入ってくるためほとんどの窓を閉ざしてしまったとのこと。
窓の横にはこのアトリエで制作活動をしている坂本繁二郎のモノクロ写真が飾られている。そこに写っている家具も、目の前にある。モダンなデザインのテーブルだ。
そしてこの建物は全体が吹き抜けになっていて、中二階が存在する。ロフトのような部屋。そこへ登る階段がまた不思議で、途中からありえないくらいの急斜面になっている。もともとここはらせん階段にしたかったらしいのだが、当時の大工さんがらせん階段の意味がわからずに作業を続け、このような不思議な階段になったとのこと。画家本人は気に入らなかったらしい。
外観はとてもかわいい。緑に囲まれている。もともとあった八女をアトリエの場所に選んだのは、坂本繁二郎がしばらく滞在していたフランスのバルビゾンに、風景がとても似ていたことかららしい。現在はそのアトリエがそっくりこの場所に移築されているけれど、この場所も自然豊かで、というよりあの石橋さんが市民のためにつくった公園のような場所にあるので、窓からは緑がいっぱいだ。きっと繁二郎さんも喜んでおられるだろうという話だった。
で、アトリエを見学してから「坂本繁二郎展」を見た。めったに見ることができない「うすら日」という牛を描いた作品がある。この絵を見た夏目漱石がその感動を新聞に掲載したことから、坂本繁二郎はとても救われた気持ちになったと説明されていたのが印象的だった。
何度が見ている「放水路の雲」という作品、今回は2枚展示されていた。この何気ない風景を描いた絵が僕の一番のお気に入りだ。