イタリアのヴェネチアを旅したのは2000年のことだったと思う。
オランダ経由でヴェネチアに向かい、空港からとりあえずバスに乗り込んだ。言葉が分からないので適当に乗ったらヴェネチアに着いてしまったのだ。何でかなあれは、いまだに謎だ。
映画「旅情」を何度も見ていたので雰囲気は何となく分かっていたけれど、やはり中世から残る街並みということで、その場に自分がいることだけでも感動していた。
この頃の旅は宿を決めずに旅していたので、とりあえず到着してから安そうなホテルをまわってゆく。フロントで空き部屋があるかを聞いて、部屋を見せてもらいながら決めるのだ。
アジアではその方法で何とかなったけれど、ヴェネチアはとにかく高いホテルばかりで結構あせっていたのだ。
数軒目に立ちよったホテル、普通は8000円くらいの料金らしいのだが、フロントの方が「スペシャルルームがある」と含み笑いをうかべながらささやいた。そして案内されたのが物置を改造したような部屋で、広さは3畳ほど。ベッドに寝転びながら洗面所で手を洗えるというコンパクトさ。トイレは外。とりあえず窓はあるので安心し、ここに決定。料金は3000円でユースホステル並みだった。
この部屋を見つけたおかげでしばらくヴェネチアに滞在することができたのだった。といっても6日間だったろうか。
僕は運河を行く船の乗り放題券を購入し、毎日乗りながら街並みを運河から眺めていた。