畑 来実世(はた きみよ)
「お昼ごはんのはたぼう」 店主
お昼過ぎの店内、快活な関西弁が響いている。まるで大阪のダウンタウンでコントを聞いているような雰囲気だけれど、カウンターに座るお客さんは大分弁。やがてお腹が満たされたお客さんは「おおきにー!」ととびきりの笑顔で送り出される。
これが大分県竹田市にある「お昼ごはんのはたぼう」での日常的ワンシーン。
かつて0泊3日弾丸フェリーと呼ばれる「さんふらわあ」で大阪から何度も大分に旅していたことが、ここ竹田市に移住するきっかけとなった来実世さん。大阪では事務の仕事をしていたらしいけれど(似合わない!)、年に何度か弾丸フェリーに乗り、海の上から夜の町の灯りや星空を眺めたりすることが最高の気分転換の時間だったという。そして何度目かの大分行きで竹田市を訪れ、初日に様々な地元の方と知り合い、いろいろと話が盛り上がっていくうちになぜか夜には市の移住担当者との個人面談にまで発展してしまったという。仕事にも一区切りついていた来実世さんは、その流れに身を委ねるように竹田市に移住することになったのだ。それはどこかで人生を変えたいと思っていた矢先の出来事でもあった。
そしてここ竹田市で来実世さんの人生はまさに大きく変わってゆく。
大阪ではバンド活動でボーカルを務めていた来実世さん。行きつけとなった市内にある「おんがく食堂『歩』」ではミュージシャンである店主の池見優さんと意気投合し、お店のステージに立つことになる。小さな町でミュージシャンとしての活動が始まってゆく。そして4年後には栄養士の資格を生かし、「おんがく食堂『歩』」の空いたお昼の時間を利用してお店を始めることになったのだ。それが「お昼ごはんのはたぼう」のはじまり。メニューにある家庭料理の数々は、かつて両親が大阪本町で営んでいた食堂の味を、思い出の中から呼び覚ますように料理される。どれも美味しい!
もちろんミュージシャンとしても活躍中。竹田市の8ミリフィルムを集めて地域映画を作ろうというタケハチプロジェクトでは挿入歌を担当している。
竹田市は移住者が非常に多い町として知られる。積極的に受け入れているということもあり、全国からこの人口2万2千の小さな町にやってくる。まるで多民族国家だ。特にアーティストと呼ばれる作家さんなどは50人近くがこの町に根を下ろしている。竹田市はまるでニューヨークだ(飛躍しすぎか?)。
来実世さんにこの町の魅力をお聞きすると、やはり人々の魅力とのこと。僕も竹田市に足を運ぶたびにそう感じる。ただ今となってはそれは地元の方々の魅力だけでなく、来実世さんのように突如としてやって来た方々が生み出す多様性のある生き方そのものが、大きな魅力としてこの町を形成しつつあるように思えてくる。ほんと不思議な小さな町だ。
「小さい町だからこそできることがあります!まあぼちぼちですねえ。独立も考えてますよ。空き店舗情報お願いします!。」
今日も山口百恵の音楽がかかる店内に「おおきにー!」と元気な声が響いている。
「お昼ごはんのはたぼう」
878-0024 大分県竹田市玉来896-1 午前11時~午後3時 (売り切れ次第終了)
℡ 080-1479-5504