雨音の奄美大島 その2
- 川上 信也
- 2018年2月9日
- 読了時間: 4分
二日目の朝は晴れていた。
雨の奄美大島を、と思っていろいろイメージしていたけれど、天気予報80%雨の確率で晴れるなんて思ってもいなかった。ホテル・カレッタは目の前がビーチなので、朝焼けに輝く砂浜まで徒歩3分。アダンの木が砂浜に沿って小さな森のように茂っている。年中このような緑の季節なのだろう。所々にベンチが置いてあり、地元の方はここで普段から至福の時間を過ごしているのだろう。鳥の鳴き声が響く葉っぱのトンネルを抜けると足跡のないまっさらな砂浜が現れた。朝焼けなのでピンク色に光っている。見上げるとアダンの葉のシルエットが美しい。ずっとモノクロ撮影していたので、このカラーがなんだかまぶしい。

空が赤から黄色になり始めるころ、雲行きが怪しくなりはじめた。光は失せ、一気に灰色の朝が広がってゆく。風が強まり、鳥たちがいっせいにどこかへ飛んでいった。この急変は何だろう。奄美大島の特徴なのだろうか。まるで山の天気みたいだ。やがてポツポツと雨粒が音をたて始めた。

ホテルを出発し、車で15分ほど山道を登ったところにひっそりとある「自然観察の森」へ。ここは遊歩道が設置されており、奄美の森を眺めながら遠く海も見渡すことができる。それほど知られていないように思うけれど、とても快適な森の散歩道だ。到着したときは念願どおりの雨。森に降りそそぐ大粒の雨。

池の中をのぞけばヤモリのような姿が。出会った方に名前を聞いたんだけど忘れてしまった。

雨なのでルリカケスに出会うのは難しいだろうと思っていたけれど、2度ほど遭遇。奄美にしかいない不思議な鳥、かなりけたたましい声で鳴く。飛びたつ瞬間を撮影。

続いて名瀬から国道を南に下ったところに広がるマングローブの森へ。雨の中カヌーに乗ってしまおうかとも思ったけれど、救命胴衣をつけなければいけないのでカメラは雨に濡れっぱなしになるらしい。なのでここはあきらめて展望台までの遊歩道を歩いて撮影することにした。雨にけぶるマングローブ林。植物たちの濃厚な香り。木々の呼吸によって霧が生まれ、森はその大気によって洗われているかのよう。

続いてハートロックと呼ばれる岩がある砂浜へ。といっても目的はハートロックではなく、そのアプローチに広がる森。たまたま見つけた場所だけど、ここにはトトロの映画で傘として使われていたあのでっかい葉っぱが多く自生している。雨はさらに強くなり、葉っぱが大きい分、雨音もポタポタと低い音で響いている。砂浜が近づくと風と波音が森の木々に反響しはじめる。波音と雨音のハーモニーが広がる不思議な道。とても古代的な風景の感覚の中、日が暮れてゆく。


最終日は無理せずに空港周辺の森へ。
この森は前回来た時に飛行機までの待ち時間で訪れたことがあり、そのときにアサギマダラの越冬の姿を多く見かけたのだった。ほとんど地元の人にしか知られてないようだけれど、サイクリングロードにもなっている。今回も飛行機の待ち時間を利用してこの森を散策。飛行場から海沿いに歩いて行ける距離に広がる森。風がとても強い。


前回ほどは見つけられなかったけれど、数匹発見。近づいても逃げないけれど、冬の貴重な休息を邪魔するのも気が引けるので静かに寄って数枚撮影。弱い雨が降っていたので羽根に雨粒が付いていた。

ほんの3日間の奄美大島だったけれど、機内で配られた黒砂糖をかじりながら雨音の中に響くシャッター音をとてもいとおしく思い出していた。今回の旅、ほとんど雨音ばかりの日々だった。こんな日を選んで撮影を続けたのは初めのように思うけれど、森は雨の日だからこそ輝いていた。命あふれる奄美の森で雨音を通じて伝わってきたもの、というより自然が伝えてくれものは、きっと僕にとってかけがえのない大切な想いとして心に、そして写真に残ってゆくのだろうなと思った。
近々また来たい。もうちょっとゆっくり、そしてもちろん晴れた日にも。