倉敷はここ数年で何度か訪れている。
関西での仕事が入ると帰りに立ち寄ることが多い。というより仕事帰りばかりだったかな。
今回は岡山での撮影だったため、帰りにやはり倉敷へ。
先週から原田マハの「楽園のカンヴァス」を読んでいたため、どうしてもその舞台ともなっている大原美術館に行ってみたかったのだ。そして小説に登場するピカソの「鳥籠」、ルソーの「パリ近郊の眺め バニュー村」をじっくり眺めてみたかった。
そしていつもいいなあと思っている植物に覆われた入口へ。
館内はもう閉館一時間前ということもあり、とても静かだ。数人が見ている程度なのでじっくり絵と向き合える。コローの小さな絵から始まり、クールベ、シャヴァンヌと続く。シャバンヌの「幻想」は小説の最初に出てきた絵だ。正直いうとあんまり感動しなかったんだけど、これもまあ人それぞれだから。
とても惹かれたのはセザンヌの「風景」、ヴラマンクの「サン ドニ風景」、カリエールの「想い」、マティスの「エトルター海の断崖」、フォートリエの「雨」などなど。ピカソの「鳥籠」は僕がもう少し目が肥えてからのほうが良さそうだ。見たかったルソーは今回は展示されてなかった。見過ごしたのかと思って監視員の方に確認したけれど、やはりなかった。残念。
これから何度ここに来るのか分からないけれど、きっと来るたびに好きな絵は変わってくるんだろうと思う。
外に出ると、美観地区は控えめなブルーの夕暮れに包まれている。
草花のシルエットが静かに揺れている。月がこちらをのぞき込むように姿を見せる。
この時間の水路の映り込みはいっそう美しい。
遠くにとても控えめな飛行機雲が見えた。
周囲の人々の会話も控えめな薄暮の頃。
倉敷駅に到着。
いつもなんてことのない駅だなあと思って通り過ぎていたけれど、この時間になるとアーチが目立ってとても個性的な駅に見えてくる。
さて、次はいつ来ることになるんだろう。