北杜夫の「どくとるマンボウ航海記」。僕はこの本を高校生の時に読み始め、昨日読み終えた。30年かかった。
高校2年の時、受験勉強に疲れては自転車で近くの重信川沿いの公園に出かけ、そこのブランコで読み始めたのだ。しばらくいろんな場所で読み続けたけれど、結局30ページほど読んだところでもう本のことは忘れていた。そして30歳の頃、山小屋勤務時代に法華院の庭で再び読み始め、この時は70ページぐらい読んだだろうか。この時もこれでこの本のことは忘れた。航海記であるため、次にどうなったか特に気になるわけでもなく、章ごとにある意味完結なので、いつかまたという感じで忘れてしまうのだ。そして今回、再び最初から読み始め、何とか終えることができたのだ。ユーモアに満ちた文章で面白かったのだが、確かに途中でどうでもいいやという気にはなってくる。ただ、今読んでよかったなと思うのは、ミラノやオランダの風景を実際に見ているからその光景が実写的に想像できるということだった。もちろん時代は違うけれど。
しかし読み始めた高校の時、センター試験の現代文に北杜夫の文章が出たのだ。これはあの本の人じゃないかと親しみをもって試験に挑めたのは、とてもよかったというか、ラッキーな思い出だ。
僕の中では「どくとるマンボウ航海記」は30年近く続いた長く思い出深い航海記だ。
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