一枚のモノクロ写真
- 川上 信也
- 2024年9月6日
- 読了時間: 2分
引っ越し作業の中で、自分の持ち物を改めて見直す日々が続いている。
そんな中でずっとメッセージを発している1枚の写真がある。20年ほど前に購入したモノクロ写真で、象の集団が目の前を横断しているケニアでの写真。象の集団という特異な状況ではあるけれど、旅の途中で偶然出会ったさりげないワンシーンだ。控えめに小さく浮かんでいる雲もいい。

これは作家椎名誠さんの写真で、かつて天神西通りにあった本屋さんでの写真展で購入したもの。その写真展は椎名さんのお知り合いである当時「フォトガイドふくおか」の編集長、井上純子さんの多大な協力のもとで開催された写真展で、当時の僕は井上さんに非常にお世話になっていたので、そのお礼も兼ねて購入したと記憶している。後日サイン入りの本プリントと、写真に関する一文と僕の名前が書かれた原稿用紙が送られてきた。原稿用紙には{本の雑誌}と印字されていて、これは家宝級だなととてもうれしかったことを覚えている。
この写真をずっと部屋に飾っているけれど、絶えず何らかのメッセージを発しているように感じている。それはいい写真とは何か、ということだ。
今の時代、インスタの影響もあってパッと見のインパクトばかりが注目される風潮がある。モノクロというだけで敬遠されることもある。しかしホントに心に響く一枚というのはそういうものではないはず。パッと見のインパクトの写真って30秒も見れば、あーすごいなふーん、はい次、とスクロールゆく。一度見てしまえばもういいかなという感じで。それも娯楽の一つとしてはとても面白いとは思うけれど、長い期間飾って人に寄り添うというものではないだろう。ましてや他人が撮った写真で。 いい写真の大きな条件の一つとして、どんな人にも長いこと寄り添ってくれるもの、と思っている。
ただ、僕も写真教室で痛感しているけれど、こういう事を教えるのはとても難しい。今のような時代になるとなおさらだ。それぞれが写真を楽しむのが一番なんだろうけれど、作品を創り出してゆく写真家としての活動としては、やはりさりげなくも人に長く寄り添ってゆく、という一枚を目指していきたいと思っている。
この椎名さんの写真、あの時思い切って買っておいてほんとよかったなあとつくづく感じている。新居でも時々眺めて、自分のほんとに撮りたいものとは何か、ということを改めて気付かせてくれる一枚だろうと思っている。

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