天草の本渡に有名な菖蒲園があるというので行ってみることにしたのだが、とにかく天草は福岡からあまりに遠いので、本渡でホテルを予約し、翌朝から撮影しようと予定をたてた。
本渡のホテルには夕方に到着したのだが、街中であるにもかかわらず夕食をたべるところがあまりない。マック、コンビニ、ラーメン屋くらいはあるようだけど、ここまで運転してきたんだからもうちょっと地元らしいお店はないものかとホテルの周囲をしばらく歩いてみたのだった。
すると大通りからちょっと離れたところに古民家風のお店を見つけ、まだ開いているようだったのでチェック。メニュー表も玄関前にある。地元の魚料理のようだ。僕はこういう初めての、しかも店内が見えないお店はしばらく周囲をウロウロしてなんとなく様子を伺いながら入店の決断をする。地元の方々で盛り上がってたらいやだし、機嫌の悪そうな店主が出てきても困るしね。
お店周辺を3周位したところで(あやしいな)、とにかく静かそうで問題もなさそうだったので入ることを決断。
入口がいわゆる和風建築のとにかく小さい裏口にあるような扉だったので、いきなり頭をぶつけて入店した。すると女性店員が「大丈夫ですか?いらっしゃいませ」と笑いながら出迎えてくれたので、ホッとした。決してわざとぶつけたわけではないんだけどね。
すると広い店内は僕1人。ちょっと1人は落ち着かないなあと思いながら、なんと個室の6人テーブルに案内された。どこに座ればいいのかも分からない。思わずえーと上座はどこだっけと1人無駄な事を考えてしまった。
真ん中に座ってメニューを見ると、思っていた以上に高い。なるほど高いからあまりお客がいないのかな。僕は玄関前でチラッと確認したときは定食がありそうなので安心していたのだが、よくよく見てみると魚定食が2800円だ。ヒエー、こんな高い定食は初めてかもなあ。でも単品で魚1皿だけ頼むわけにもいかず、結局この豪華であろう定食を頼むことにしたのだった。しかも個室6人テーブル、店内に僕1人という状況。
焼き魚は20分ほどかかるということで、一体ここでどのように過ごすべきかを考えた。とりあえず足を伸ばしてみた。前に誰もいないので伸ばし放題。窓がないので景色は見えず、仕方なく天井を眺めていた。高くて古民家らしい太い梁が見えている。そしてやや落ち着いてくるとJAZZが流れていることにようやく気がついたのだった。なるほど、まあまあここはいい雰囲気かもしれない。
ということで本を取り出してしばらく読むことに。こういう状況こそ読書なのかもしれない。しばらく又吉直樹の新刊エッセイを読み、ここはかなり上等なバーのような雰囲気だなあと思い始めたところで焼き魚定食が運ばれてきた。お刺身、茶碗蒸しもあってなかなか豪華。この焼き魚はなんだろう。細長いやつ。
まあ1人でゆっくり食べながら過ごしたわけだけど、思えばこういう状況になることは結構ある。1人でお店で割りと長い時間。
こういう時は読書はなかなかいいなと思いながら焼き魚を食べていた。スマホに頼りがちになることもあるけれど、やはり読書の方がいい。目もそれほど疲れない。そして例えば焼き魚を食べながら読んでたりすると、ちょっとした染みが紙につくこともある。これが結構いい思い出になったりするのだ。もっとお洒落に押し花なんてこともあったような気がするけれど、そんなことまでせず、自然に紙についた染みなんていいなあと思うのだ。学生時代に読んでいた本などには隣に座っていた友人の落書きが残っていたりする。それが今となってはとてもいとおしい時間を思い出す大切な落書きになっているのだ。
えらく長いこと書いたけど、結論は本についた焼き魚の染み、ということになってしまった。もっといい事書こうと思ってたんだけど、ま、いいか。これもいずれ大切な旅の思い出になるにちがいない(たぶん)。
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