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執筆者の写真川上 信也

サボテンとペットサウンズ

玄関先に飾っているサボテン、いや置きっぱなしにしているサボテン、

ふと目をやると芽が出ている。

今にも花が咲きそうだ。

このサボテン、2011年の僕の写真展「フクオカ・ロードピクチャーズ」が富士フィルムフォトサロンで開催されたときに、カフェアリワの方がお祝いに持ってきてくれたもの。

なので9年前からこの玄関先に置かれている。ほとんど世話をしたことがない。

年に2回ほど、忘れたころに水をほんの少し与えるだけ。

これでよく生きてるなあと思うのだけれど、サボテンとはそういうものなのかもしれない。

あんまり世話しすぎるとかえって枯れてしまうこともあるように思ったり。 

 このサボテンは実は2013年に一度花を咲かせている。

突然咲いていたものだからびっくりした記憶がある。

今回は芽を見つけたのでジワジワと楽しむことができる。


サボテンをいただいたのは2011年。しんみり思い出す。

そして花乱社から第一弾の本として完成した「フクオカ・ロードピクチャーズ」。

当時、カフェアリワのカウンターに立っておられた原田さんからビーチボーイズの「ペットサウンズ」の魅力を教えていただき、あまりにもいいものだから何度も繰り返し聴いていた。なのでこの本の編集はずっとこのアルバムを聴きながら行っていた。一度聴いただけではなかなか魅力が伝わりにくいアルバムだけれど、いつ聴いても新たなる発見が次々と見えてくる不思議なアルバム。

今でこそビートルズの「SGP」よりも評価が高かったりするけれど、当時は拍子抜けするほど評価されずに埋もれていったアルバム。それがポール・マッカートニーが世の中で最も美しいアルバムと評価したり、ジョージ・マーティンが天才が生み出したアルバムと言ったりで、次第に評価が高まってきたアルバム。

 このアルバムと比べるのもなんだけれど、僕の写真集「フクオカ・ロードピクチャーズ」もかなりの自信作のつもりだったけれど、セールスはとても難しいものとなった。東日本大震災でなかなか宣伝ができなかったことも大きかったけれど、表紙のデザインが分かりにくいという声もあった。僕はとても気に入っていたのだけれど、商業的にいえば分かりやすいということも大事になってくる。「福岡の休日」はものすごく分かりやすかったということも成功の一因だった。ただ、すいぶんあとになってこの表紙がデザインで賞をとったり、この表紙をまねた本まで出現した。一冊の本の真の評価というのは時間がたってみないと分からないものなのだ。もちろんこの本が「ペットサウンズ」のようにものすごい評価されてくるとは思っていないけれど、少ない数の方でも心に深く響いてくれればいいなと思っている。


サボテンからこんな話になってしまった。

咲くのが楽しみ。





  







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