先日、うきは市へシュロほうきの取材へ行ってきた。
耳納連山がすぐ近くにそびえる、のどかな平野の片隅といった感じのところ。
10年ほど前にも取材させていただいたことがある。ただその時の取材は雑誌の小さなスペースでの紹介だったので、詳しい制作過程まではお聞きしていなかったように思う。
今回は「西日本文化」の取材。巻頭のトップページになり、雑誌が雑誌なので歴史からお聞きしてゆくことになる。もちろん僕は撮影担当で文章は編集の嶋田さん。このコーナー、すでに6年ほど続けている。様々な職人さんに出会ってきたけれど、さて今回はどんな方なのかいつも楽しみにしながら車で向かっている。
職人さんというのは気難しいというイメージがあるのかもしれないけれど、僕がお会いした職人さんたちは非常に親しみやすく、気持ちのいい方ばかりだったように思う。もちろんそうでない偏屈な方も大勢おられるんだろうけれど、真の職人さんというのは周囲にやさしく、礼儀正しい方が非常に多いらしい。僕も6年取材してきてそう思う。
シュロほうきを制作している職人、木下さんもまさにそんな方だった。初対面からとても気持ちのいい笑顔で迎えてくれた。うきはにおけるシュロの歴史や、父親のこと、シュロほうきの魅力などをとても楽しそうにお話をしていただいたのだった。
そして制作現場へ。
倉庫の扉を開けると木下さんの父親が黙々と制作している。数年前病気をされてからは息子さんが中心に制作しているらしいけれど、今も一日中シュロほうきを作っているそうだ。
「男前に撮ってよ」と笑顔で声をかけられ、できるだけお邪魔にならないよう静かにシャッターを押していった。
シュロほうき、学校でよく見かけた懐かしいほうきだ。うきはでは明治時代から近くに自生しているシュロを使って作られていたそうだ。かつてズームイン朝で取り上げられてから再び脚光をあび、今はエコブームや昔の物を大切にするという流れから若い方々にもシュロほうきファンは増え続けているそうだ。見た目も今見ればとても素朴で美しいと思う。シュロを交差させて束ねている部分などは特に美しい。黒い竹を使用しているのも日本らしくていい。ごみも非常によく取れることから、掃除機を使わない人もふえているそうだ。
こういったシュロほうきを作っているのは、ここと和歌山県の2か所のみだという。
木下さんはあまりSNSを利用していない。あまりそういった世界はすきではないそうだ。直接電話で注文を受け、声を聴き、買っていただいたらずっとメンテナンス無料で続けてゆく。出会いやモノを大切にするという精神。これがここの大きな魅力となっている。
僕もかつて購入したシュロほうきが家にあり、玄関を時々はいている。今回取材させていただいたことで、一層親しみがわいてくる。汚れるのがもったいないとさえ思える美しいほうきだ。