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川上 信也

ねこのはなし 第1話


ねこ好きな人たちが、ねこについての話を順番に書いていくこととなり、

第1話 は僕からです。

写真はもちろん僕が担当していきます。

川上信也  文 写真

ある日のこと、知り合いがこんなことを言った。

「猫は人類を征服しようとしているのではないか」と。

猫は近所の夕食時間から世界情勢にいたるまで実は何でも知っていて、知っていても知らないふりしているだけのことらしい。まさに猫かぶりしているとのこと(この用法は合っているのか?)。

猫好きの僕にはとてもくだらない話と思ったけれど、ここ数年の猫ブームを見ていると猫の地位がものすごく向上しているのは確かだ。僕が子どもの頃は「お魚くわえたドラネコ追っかけて」くらいの存在だったように思うけれど、それが今では人間社会の中で揺るぎない地位を獲得している。犬のようにご主人に忠誠心を持っているわけでもなく、働くわけでもなく、ただ一日中ゴロゴロして時々人に甘えるだけで、勝手に人間が猫なで声ですり寄ってきて(僕も含む)その地位をやすやすと与えてしまったのだ。

思い返すと日本の人口減少が問題になったころから猫ブームは広がってきたように思う。核家族だからせめて猫を、ということから自然にそうなったと思うのだけれど、これもどうやら猫の策略という噂もあるとのこと。家族に入り込み、次第に人口を減らす術を習得しながら猫だらけにしていこうという策略。それが最終的に人類を征服ということにつながってゆくらしい。しかし世界に目を向けるとまだまだ人の数は増えているようなので、これは日本限定策略ということだろうか。なるほどなるほど、こうなったら日本の人口に猫をプラスしたらどうかとも思うけれど、犬ならともかく猫をプラスしても労働人口は増えないなあなどと考える雨の水曜日。

と、僕も洗脳されそうになってきたので我に戻らなければ。

もしかすると猫は隣の夕食時間くらいは知っているかもしれないけれど、世界情勢は分かりません。なんせ猫のひたいほどの脳みそしかないのだから。しかし猫って時々じっと何かを見つめている。あれは何を思っているのか。もしかすると何かを予知しているのか。そのうち「猿の惑星」のように「猫の惑星」にしようと企んでいるのか。なんかそれって楽しそう!とか思ってしまうのだけれど、そう思わせるのももしかして策略だろうか。

このようにどうでもいいことを何でも考えすぎてしまう人間に比べ、猫は一日ゴロゴロしながら、謎めく瞳を輝かせ、甘いスリスリ、冷たい拒絶を繰り返し、理解を超えた不思議な魅力を振りまきながら人のそばで悠々と暮らしている。もはや人類は支配されているのかも。

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