「JOHN BARRY GOLD DISK」
プレーヤーを手に入れてからレコードをよく聴くようになった。先日実家から高校生まで集めていたレコードを持ち帰り、それぞれ当時とはまた違った感覚で聴いている。当時はもっといい音だったらいいのになんて思いながらレコードの埃などを取り除いていたけれど、今はむしろ音の悪さが柔らかく広がりがるように聴こえてくる。雑音もアナログ的な味わいだ。針飛びなどは楽しくさえある。この心境の変化は一体どういうことなんだろう。これは進化というのか退化なのか分からない。ただ間違いないのは僕は成長しているということ。なら進化なのかなあはてはて。
今日聴いているのはジョン・バリーだ。この作曲家のことはこのアルバムで知った。僕が中学生のころだったと思うけれど、気が付けばこのレコードがあった。それまでは間違いなくなかったのだ。だから買った記憶もない。おそらく両親がどこからかもらってきたものなのではと思う。自然に聴き始めたジョン・バリー。一曲目がいきなり知っている曲だったので、なんだこの曲を作った人なんだとうれしくなって何度も聴いた。「007・ジェームズボンドのテーマ」だ。エレキの音がかっこいい。改めてジャケットを見ると、これは初代ジェームズ・ボンド役のショーン・コネリーなのだ。映画は見ていたけれど、全然違う人に見えた。今見ても何だか別人に見える。胸にバラつけてピストル構えていて、一体どういう状況なのだろうか。スパイにはよくある状況なのかもしれない。ジャケットはかなり古ぼけていて、しかもピンボケだ。これは決して古いからボケてきたというわけではない。これも味わいというべきなのかな。全体が金色に施されているジャケット、もしかすると3曲目の「ゴールド・フィンガー」を意識してのことだろうかと思っていたけれど、このアルバムのタイトルが「GOLD DISK」という名だと発見したのは先日のこと。知るまでに30年かかっている。
A面は007シリーズのジョン・バリーが手掛けた曲、「サンダーボール作戦」「女王陛下の007」などが続き、印象的なのは「007は二度死ぬ」のテーマ曲。日本ロケ(鹿児島霧島ロケだ!)ということもあるんだろうけれど、とても情緒的で美しい旋律。間奏は琴のような楽器で演奏されている。
B面は007以外の曲が中心となり、「さらばベルリンの灯」など暗い中でもハッとするようなロマンチックな旋律が心に響く。「冬のライオン」はジャズを意識したアレンジで、「野生のエルザ」は広大な草原をイメージさせるオーケストラとなる。そして僕が最も好きな曲が「真夜中のカウボーイ」だ。
この曲はレコードを聴かなくなってからもよく聴いていた曲。ちょっと悲しげなハーモニカがたまらない。例えばドライブしながらの撮影中、この曲が始まると間違いなく映画のワンシーンのような錯覚を覚える。くじゅうの高原がアメリカの荒野や田舎町に見えてくる。解説には「若者の苦悩をメランコリックに表現している」とある。そういわれればそんな気がしないでもないけれど、僕にとっては様々なイメージを抱かせてくれる哀愁のかたまりのような曲だ。久々のレコードのバージョンを聴いてなおさらそう感じた。しかもこれほど雑音が心地いいなんて新鮮な発見。