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川上 信也

レコード復活


レコードに針を静かに置いて音楽をじっくり聴くという行為はもう忘れてしまったような感覚だったけれど、ここ数年、レコードが再評価されているようで、プレーヤーがずいぶん安く手に入るようになった。僕も一か月前に購入したのだが、スピーカー付きで一万円。安い。そして実家の物置から高校生までに集めていたレコードの数々を持って帰ったのだった。

僕は小学生の頃からビートルズの大ファンだったので、ビートルズはほぼ揃っている。久々にジャケットを開けてみると、こんなに見ごたえのあるアルバムだったんんだなあと改めて思う。「SGT. PEPPERS・・・」なんてサイケデリックな色のジャケットの裏側に歌詞がすべて印刷されているし、「LET IT BE」を開けるとジョンの写真の隣に静かにオノ・ヨーコが座っている。当時はまったく気づいてなかったんだけど。

さっそく針を落としてみると、やはり今まで聞いていた音と違う。というか元々この音を聴いていたわけなんだけど、CDのクリアすぎる音に慣れてしまってたんだなあと思う。特にギターの音が荒々しく響いてくる。「Drive My Car」のイントロ、「All My Loving」のジョンのリズムギターなどなど、もちろんレコードが古いというのもあるんだろうけれど、こんなに迫力あったんだなあと思えてきて、本物のビートルズを聴いてるような感覚。

そしてジャケットの面白さ。並べるだけで楽しくなってくる。

僕のおじさんから譲り受けたレコードも多く、ストーンズのレコードやシングルレコードはほぼすべておじさんのもの。よしだたくろう(この当時はひらがな)のレコードも数枚。「たくろう オンステージ 第2集 」などはCD化もされてないから貴重な音源かもしれない。

ビートルズの「ホワイトアルバム」だけれど、色あせてベージュアルバムになっている。このアルバムは中学校の頃、同級生から借りたままになっているのだ。さてどうしよう。どこにおられるのか松田君!

シングルレコードもいいですね。プロコムハルムってこんな人たちだったんだ。

そしてレコードになると、一曲一曲をじっくり聴いてしまう。これは当然ジャケットも関係しているのだろうと思う。大きなジャケットを眺めながら音楽を聴いていると、一曲一曲の重みというか、存在まで大きくなったように思えてくる。解説もとても分かりやすく書かれていて、ストーンズの「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」のシングルの解説には、このレコードが発売される頃にはブライアン・ジョーンズの麻薬問題が解決していてほしい、なんてリアルな言葉もある。ブライアンが亡くなる直前ってことなんだよなあ。当時の空気感まで伝わってくるようだ。

そして、一枚の傷だらけのレコードを発見。とてもきたない字で「かわかみしんや」とマジックで書かれている。これは僕が幼稚園の頃、ピアノ発表会で録音されたものなのだ。僕もとてもよく覚えている。途中で間違えて演奏が止まってしまったこと、椅子に座るときに肘が当たって音が鳴ってしまったこと、ぎこちない演奏、すべてが蘇ってくる。当時はこんなサービスがあったんだなあ。演奏した曲は「おもちゃのシンフォニー」。当時はハイドンの曲ということだったけれど、今はモーツアルトになっている。アマデウスではなくて、お父さんのほう。楽譜が見つかったとかで。

レコードを聴いていると、果たして進歩って何だろうと思えてくる。CDになってダウンロードになって音楽は果たして幸せなのだろうかと。もちろん便利なので僕も利用しているし、そういう世界があっていいんだけど、アナログを見直しながら音楽の素晴らしさをもう一度体験してみるのはとても大切なことだろうなと思ったのだった。

 そしてこれは写真や本の世界でもまったく同じ感覚で言えてしまうこと。

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